純愛は似合わない
今度は、私の手を掴んで指を絡める。
その親密な仕草に、私はハッとして顔を上げた。
「……なぁ、早紀。取引きをしないか?」
良くない予感がした。
また、速人に引き摺られてしまう。
私は自分の指に絡み付いた彼の手を見る。
「1月のはじめに、正式な社長就任の承認を受ける算段になっている。昨日言った通り、この身体に友野の血が流れていなくても」
速人は口の端で笑った。
でもその目は、少しも笑ってはいない。いつもの、見慣れた冷たい目だ。
「貴方は……いつ知ったの? その」
「会長の実子で無いと?…………千加と婚約しなければならなくなった時だ。青天の霹靂とはこのことだと思ったよ。母に騙されたと」
仄暗い瞳は、昨日よりも強い光を放つ。
私はほぞを噛んだ。
昨日の速人の告白は思ったよりも、私に動揺を与えていた。
本来は同情も欲望も、感じている場合では無かったのだ。
この手を振り払わない限り、私の心の静寂は有り得ない。
そのくらいは分っていたつもりなのに。
「でも僕は、この生き方以外知らないから、今更、他の人生は歩めない。……だから」
速人の唇からは、残酷な言葉が紡がれる。
「僕と結婚して欲しい。……友野最高顧問の血を引くお前が、僕の子供を産んで欲しい」
その親密な仕草に、私はハッとして顔を上げた。
「……なぁ、早紀。取引きをしないか?」
良くない予感がした。
また、速人に引き摺られてしまう。
私は自分の指に絡み付いた彼の手を見る。
「1月のはじめに、正式な社長就任の承認を受ける算段になっている。昨日言った通り、この身体に友野の血が流れていなくても」
速人は口の端で笑った。
でもその目は、少しも笑ってはいない。いつもの、見慣れた冷たい目だ。
「貴方は……いつ知ったの? その」
「会長の実子で無いと?…………千加と婚約しなければならなくなった時だ。青天の霹靂とはこのことだと思ったよ。母に騙されたと」
仄暗い瞳は、昨日よりも強い光を放つ。
私はほぞを噛んだ。
昨日の速人の告白は思ったよりも、私に動揺を与えていた。
本来は同情も欲望も、感じている場合では無かったのだ。
この手を振り払わない限り、私の心の静寂は有り得ない。
そのくらいは分っていたつもりなのに。
「でも僕は、この生き方以外知らないから、今更、他の人生は歩めない。……だから」
速人の唇からは、残酷な言葉が紡がれる。
「僕と結婚して欲しい。……友野最高顧問の血を引くお前が、僕の子供を産んで欲しい」