純愛は似合わない
「勿論。そんなにデカイ夢はみてないけど俺もこれからなんで」
ヒロは私の手の中のビールを取り上げ、ごくりと喉を鳴らしてそれを飲み込む。
「ねぇ……早紀ちゃんも乗っからない? 早紀ちゃんだって、ずっとあそこに居たい訳じゃないだろ。だったらこの店を大きくするのに一枚噛むってのも、良いんじゃないの」
私はヒロの横顔を見上げると、砕けた口調のわりに真面目な瞳が私を見詰めていた。
「早紀ちゃん、寺田に聞いたよ。この間だって汚れた洗面所の掃除してたって。それってさ、俺の店に愛着持ってくれてるってことじゃなぁい」
「……ヒロ」
「なぁんて、下心付きで誘うのは反則?」
下心なんて言い方で軽くみせているけれど、私のことを考えてくれているのは分かる。
ヒロには私の足元がぐらついていることくらい、きっとお見通しで。
それでも私はいつも通りの虚勢を張った。
「そんなお気遣い無用。大体……仕事に私情を挟むとロクなことにならないわよ、千尋君」
彼は私の言葉を一笑に伏した。きっとこんな答えも想定内なのだろう。
「いーじゃん。この先一緒にいる理由になるでしょ。たとえ早紀ちゃんが俺に惚れなくても、繋がっていられるもん」
私の目の前の机に腰を落としたヒロは怯むこと無く美麗に小首を傾げ、押しの強さを披露した。
「……『もん』じゃないわよ、全く。可愛いキャラ演出が女の私より上手なの、何だか腹立たしい」
ヒロは私の手の中のビールを取り上げ、ごくりと喉を鳴らしてそれを飲み込む。
「ねぇ……早紀ちゃんも乗っからない? 早紀ちゃんだって、ずっとあそこに居たい訳じゃないだろ。だったらこの店を大きくするのに一枚噛むってのも、良いんじゃないの」
私はヒロの横顔を見上げると、砕けた口調のわりに真面目な瞳が私を見詰めていた。
「早紀ちゃん、寺田に聞いたよ。この間だって汚れた洗面所の掃除してたって。それってさ、俺の店に愛着持ってくれてるってことじゃなぁい」
「……ヒロ」
「なぁんて、下心付きで誘うのは反則?」
下心なんて言い方で軽くみせているけれど、私のことを考えてくれているのは分かる。
ヒロには私の足元がぐらついていることくらい、きっとお見通しで。
それでも私はいつも通りの虚勢を張った。
「そんなお気遣い無用。大体……仕事に私情を挟むとロクなことにならないわよ、千尋君」
彼は私の言葉を一笑に伏した。きっとこんな答えも想定内なのだろう。
「いーじゃん。この先一緒にいる理由になるでしょ。たとえ早紀ちゃんが俺に惚れなくても、繋がっていられるもん」
私の目の前の机に腰を落としたヒロは怯むこと無く美麗に小首を傾げ、押しの強さを披露した。
「……『もん』じゃないわよ、全く。可愛いキャラ演出が女の私より上手なの、何だか腹立たしい」