純愛は似合わない
―――――
―――
「……私がですか? 瀬戸課長」
気怠い金曜日の朝、更衣室を出るなり直属の上司である総務課の瀬戸課長に呼び止められた。
そして、瀬戸課長は有無を言わさず、私を小会議室に連行したのだ。
「この間の社長就任の挨拶の時、成瀬さんも居たよね。友野社長の発案で、全社員の懇親会を設ける話し、聞いただろ? 」
会議用のテーブルを挟んで対面する椅子に座った瀬戸課長は、柔らかな笑顔を私に向ける。
30を過ぎているとは思えないほど童顔な彼は、異例なスピードで出世をし、今年の4月に総務課に異動して来た。
いつもは癒されると感じる瀬戸課長の笑みにすら、苛立ちを感じてしまう。
「それで、私に何を?」
「だから友野社長がね、君に頼めば滞りなくパーティが出来る筈だって。ま、社長命令だから、文句は彼に。社長のスケジュールは分刻みだからね、今すぐ社長にご意向を伺ってきて貰えるかな?」
反応を見るように、瀬戸課長はあえて私の顔を覗き込む。
「……そんな神妙な顔しなくても良いよ、成瀬さん。僕はね、社長の古くからの友人だから。君のお姉さんのことも知っている」と苦笑しつつ、彼は立ち上がった。
どうやら、話しは終わったと言うことらしい。
「まぁ、アレだね。お互いに内密にと言うことで、どうかな。君も素性を隠しているみたいだし」
「……承知しました」
私もまた、重い腰を上げて席を立った。
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「……私がですか? 瀬戸課長」
気怠い金曜日の朝、更衣室を出るなり直属の上司である総務課の瀬戸課長に呼び止められた。
そして、瀬戸課長は有無を言わさず、私を小会議室に連行したのだ。
「この間の社長就任の挨拶の時、成瀬さんも居たよね。友野社長の発案で、全社員の懇親会を設ける話し、聞いただろ? 」
会議用のテーブルを挟んで対面する椅子に座った瀬戸課長は、柔らかな笑顔を私に向ける。
30を過ぎているとは思えないほど童顔な彼は、異例なスピードで出世をし、今年の4月に総務課に異動して来た。
いつもは癒されると感じる瀬戸課長の笑みにすら、苛立ちを感じてしまう。
「それで、私に何を?」
「だから友野社長がね、君に頼めば滞りなくパーティが出来る筈だって。ま、社長命令だから、文句は彼に。社長のスケジュールは分刻みだからね、今すぐ社長にご意向を伺ってきて貰えるかな?」
反応を見るように、瀬戸課長はあえて私の顔を覗き込む。
「……そんな神妙な顔しなくても良いよ、成瀬さん。僕はね、社長の古くからの友人だから。君のお姉さんのことも知っている」と苦笑しつつ、彼は立ち上がった。
どうやら、話しは終わったと言うことらしい。
「まぁ、アレだね。お互いに内密にと言うことで、どうかな。君も素性を隠しているみたいだし」
「……承知しました」
私もまた、重い腰を上げて席を立った。