純愛は似合わない
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『友野ソリューションの更なる発展を祈って乾杯!!』

9月の最終金曜日。

速人の父・将人氏の、心の部下であった御園専務が乾杯の音頭をとり、 友野ソリューション本社の懇親会は始まった。

平服での参加とはいえ、男性社員は皆スーツを着用している。それは女性社員も同様でワンピースや明るい色のスーツを纏い、宴に花を添えていた。

今回の懇親会では、モートンホテルでも一番広い宴会場の使われ方である、3つのホールを繋げた大広間が用意された。

檀上やテーブルにはカサブランカを主にした華々しい花達が惜し気もなく、ふんだんに飾られている。

シェフ達が腕を奮った料理の数々は、数百名の社員が立食形式で心置き無く楽しめるようにと宴会には珍しい程、細かくセッティングされた。

はじめの10分くらい列をなしてしまうのは、いた仕方ないことではあったが。

それよりも、部屋の四隅に設けたドリンクバーの1つに、ホテルの制服を着てシェーカーを振る穂積さんの姿を見掛けた時は驚いた。その隣には何故か、穂積さんをサポートするヒロの姿までも目にした。

ヒロは私の間抜け面に気付くと、ウインクを1つ投げて寄越した。

あいつ、店はどうしたのよ。
金曜の夜をクローズするとも思えないし。まさか、寺田君に任せて来たのでは……。

いや、私が心配したって始まらない。ヒロの店なんだから。
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