純愛は似合わない
敷島紫は私を見て驚いたものの、開き直った心境でいることが見て取れた。

今は、邪魔者とみなした私を睨み付けている。


この女と速人を共有しているのかとか、一緒に帰国していたんだとか、頭の中でまとまりの無い言葉が羅列する。

社内でまことしやかに囁かれていた噂話しを目の当たりにして、折り合いの付けられない感情が胸を刻んだ。



何でいつもこうなんだろう。


私の欲しいものは、いつも誰かに持っていかれる。



彼女が起き上がった拍子にしどけない下着姿がチラリと見えた。それと同じタイミングで、自分の唇からクスッと笑い声が漏れるのを他人事のように聞いた。


「あなた失礼じゃない?」

敷島紫は腹立たしそうに、戸口にいる私に言葉を投げた。
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