夏の夜長に世を思う
ジャズの音色
少しこぢんまりしたロッジのような外装と
室内から溢れる夕日のようなオレンジの照明。
なんとなしに入ってみるには
ちょうどいい人数の客など
少しだけ日常に疲れてしまった私には
とても魅力的に見えた。
午前2時という時間にもかかわらず
5人ほどの客がまだ残っている。
外からずっと見ていたら
店主と思われる初老の男性と目が合う。
ふわりという言葉がとても似合う
温かい微笑みを私に投げかけると
カプチーノを入れる作業に戻る。
不審者だと思われかねないということに
今更ながら気づいて顔が赤くなる。
「よし…!」
緊張と期待で胸を膨らませながら
アンティークっぽく切り出された木の扉を
ゆったりと押してみたのだ。