箱舟に乗せた想い
 一年と三十五日前の今日、私は大切な人を失った。


 でも、ただ、遠く離れただけ。
 きっとどこかで、笑ってるんだろう。
 ずっと一緒だった私の事も、二人がずっと同じ時間を過ごせるように、二人の時間が永遠に刻まれるようにと願いくれたこの腕時計の事も、これからもずっと一緒だと二人で交わした約束の事も、二人で苦しみ二人で笑った沢山の思い出も全部全部忘れて。
 きっとどこかで、笑ってるんだろう。
 それが少しだけ寂しいけれど、泣いているより、ずっといい。
 私は傍に置いていた宝箱を抱えると、スッと立ち上がり、川に近付く。
 水面に夜空が映し出されて、それはとても美しいものだった。
 携帯電話で、時刻を確認する。
 時計を仕舞ってしまったから、確認する術がこれしかなかった。
 二十時五十九分。
 あと、一分。





 二十一時を、指したら――――……。
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