LOVEPAIN②

言っていたように、
20分程でS町駅のロータリーに
成瀬のアルファロメオが止まった



私がゆっくりと近付いて行くと、

こちらに気付いた成瀬が
持っていたスマートフォンを下ろすのが見えた


私に電話を掛けようとしていたのかもしれない




車内が暗いからよく分からないけど、

成瀬が今なにを思っているのか
その表情から読み取れない



私は意を決して、
成瀬の車に乗り込んだ



怒られるわけじゃないとしても、
何を言われるのか怖い




「腹とか減ってないか?」


第一声目が予想にもしなかった言葉で、
私は慌てて首を横に振った




「そうだよな。
こんな時間に食わないよなぁ」


そう言って笑う成瀬は、
いつもより私に気を使っているようで、
いつもより、優しい口調



私はシートベルトをして、そのカチッと言う音を聞くと、

もう逃げられないよな、と、息を吐く






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