幸福猫

教会の中は少しホコリっぽいが、十字架を掲げるステンドグラスはキラキラしててとても綺麗だと思った。

「誰も住んでないみたいだな・・・廃墟かな?」
ギシギシと音を立てて軋む床を歩きながら礼拝堂の一番前の席に腰をおろした。教会内は静かで外の雨の音しか聴こえない・・・まるでこの場所だけ時間が止まってるような。

「ちょっと不気味かも・・・なにも出ませんように~・・。」


高校生の男子がどうどうと幽霊の存在に怯えるなんてまったくモテない事をバラしてるようなものだ・・。

・・ーゴトッ。

「ひっ!?」

いきなりの物音に俺は哀れなほど情けない悲鳴をあげた。それでも俺だって男だ。俺は物音のした方へゆっくりと振り向いた。

にゃあ~。

「な、なんだ。猫か・・・。」

そこに居たのは真っ黒な黒猫。教会に黒猫なんて合わねー・・なんてことを俺は思ってた。

まさかこの猫との出逢いが俺の人生をほんのちょっと変えるなんて思いもしなかった。

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