幸福猫

黒い猫

黒猫はしなやかな動きで、床を軋ませることなくこちらまで悠然にして漠然と歩いてきた。

近くまで歩いて来ると、俺の隣へストンと座った。

「へぇ~・・人に馴れてるのかな。おい、にゃんこ!ここはお前の家か?」

猫に話掛けるなんて、端からみたらかなり痛い人間。まぁここには他に人はいないし、なんとなく話掛けた。

まぁ案の定、猫はこちらをチラッと見ただけだったが…。

「まぁ、一応不審者だしな俺。にゃんこ、俺の名前は満月(みつき)だ。職業は現役の高校生。よろしく☆」

俺の名前は昔から"まんげつ?"って疑問を幾度だとなく投げかけられ、みつきだと正せば、女みてぇと罵られた最悪で最高の名前だ。

にゃぁー・・。

猫は一言だけ鳴いて俺の手を人舐めした。多分、にゃんこ流の挨拶なのだろう。

「おっ!めちゃ可愛いなお前!!」

俺が猫の頭を撫でるとゴロゴロとすり寄ってくるあたりがまた格別だ。

にゃぁ。

俺が黒猫にちょっかいを出していると、猫が一鳴きした。はっ、として後ろを見ると教会の扉の前に人が立っていた。

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