幸福猫
「名前は私が勝手につけたの。真っ黒な体に金色の目が満月みたいでしょう?」

確かに、ムーンはきれいな金色の目をしていてまるで月のようだ。

「今夜は本物の月は見えないかしらね。」

「雨が降ってますからね。見えたら今夜は満月だったはずですよ。」

確か朝のニュースでそんな事を言ってた気がした。それにしても本当にこんな教会に住んでるんだろうか。

「あの、お婆さんはここに1人で・・?」

「えぇ。正確には猫ちゃんと二人だけれどもね。ここは静かでいいわ。ねぇムーン?」

お婆さんがムーンに問いかけると、にゃあと小さくムーンが答えた。まさか本当に話せているのか?

「あなたは今、おいくつ?」

「17歳・・じゃなかった。今日で18歳です。」


「あら。じゃあ今日がお誕生日なの?折角のお誕生日なのに・・・災難ね。」

災難?あぁ雨だからか。それか濡れたからかな。
「いえ、誕生日だからって特に特別なことなんてないし・・。」

「もう、その年じゃお家でお祝いとかしないのかしら?」

お婆さんはたまに子供のような無邪気な顔をしたり、すべて分かってるような大人の顔をする。老人はみんなこうなのだろうか。

「俺の家は少し特殊で・・父親も母親も仕事でほとんど家にいなかったから。誕生日もプレゼントが郵送で届くくらいで・・・」

小さい頃からずっと、こんな感じだった
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