豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
ロッカールームに入ると、光恵は再び眉間をつまんだ。頭痛はなかなか去って行かない。光恵は溜息をついた。
「ミツ二日酔い?」
先に来ていた三池が訊ねた。
「すいません、ちょっと。でもすぐ直りますから」
「お前でも、はめを外したりするんだなあ」
三池は少しおもしろがっているような様子をみせた。
「休んでてもいいぞ。必要になったら呼ぶから」
「でも……」
「いいって、そこのベンチでちょっと休めよ。酒は時間が経てば抜ける」
「ありがとうございます」
三池の心遣いは、助けに船。光恵はよろよろとベンチに腰掛けて目を閉じた。
でもすぐに「ミツ」と呼ぶ声。
誰よ、もう!
見上げると孝志が立っている。Tシャツにジャージという稽古着だ。
「ん……何?」
「ミツ、酒臭い」
「あ、やっぱり? ごめんね、すぐ抜くから」
孝志は無言でミネラルウォーターのペットボトルを差し出した。
「ありがとう」
光恵は素直にそう言った。
「ミツ、これって大人のやること?」
孝志が言った。
孝志のその言葉に、光恵は顔を上げる。
怒ってる。
「……違う」
「だよね」
「……ごめん」
「ここは仕事場で、みんな真剣に仕事してる。遊びじゃない」
「わかってる」
正論とわかってはいても、孝志の言葉にむかっとしてしまう。
お前のせいだ、馬鹿。
「もう二度とするなよ」
「……わかった」
光恵はそういったが、腹が立って仕方ない。
あいつ、何様? 殿様?
有名俳優様?
孝志が背を向けてロッカールームを出て行くのを見ながら、思わず「ほっとけ馬鹿」とつぶやいた。
声が聞こえたのか、孝志が振り向く。光恵はあわてて寝た振りをした。
ほんと、正論すぎて腹が立つ。
頭、余計痛くなってきちゃったな……。