豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


「おい、ミツ来てくれるか?」
遠くの席で三池が声をかけてきた。


側に寄ると、なんだか三池の顔が曇っている。
嫌な予感がした。


「ミツ、また改訂だ」
「……どこですか?」
「それがな、事務所がゆうみがらみで要求してきたんだが」
「はあ」
「今、ゆうみ、しんどいだろ?」
「そんな風に見えますね」
三池が溜息をつく。


「ゆうみの得意な演技をさせてくれって言ってきてる」
「それってどういう?」
「今、孝志がゆうみを静かに追いかけてる設定だけれど、もっと積極的にリアクションするような感じに」
「?」
「要するに、もうちょっと恋愛色を強めてくれっていう話なんだ。ゆうみは恋する女性を演じると、すごくいいからって」
「でもそれって……」
「ああ、わかってる。結構台本のテーマをかえてしまうよな」
「わたしは、この本で恋愛模様を見せたい訳じゃないんです。一人の男性の成長を見せたいのであって」
「わかってる。よくわかってるよ」
「なら……」


三池は深溜息をついた。
「仕方ないんだ」


光恵は黙った。


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