豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
光恵は自分の机に戻る気がせず、そのまま扉から外に出た。
日差しが暖かい。
鳥がどこかで小さくないている。
台本の改訂をしなくてはならない。割と大規模だ。これまでの作品でも、大幅な改訂はあった。でもテーマを変えるほどのものは……。
三池はいつも光恵の本を大切にしてくれた。
光恵は稽古場の外壁をなぞりながら、ぼんやりと歩いた。
自分が悪い。大人になりきれてない。
これは仕事なのだから、自分の感情を割り込ませてはいけないのだ。
キスシーンだって、ベッドシーンだって、求められれば書く。
嫌なら、文筆を仕事にするのは、あきらめなくちゃならない。
「先に進むのも、とどまるのも、全部自分の選択」
光恵は小さくつぶやいた。
以前、輝の胸で泣いた、稽古場の脇にたどり着いた。
力なく壁にもたれかかる。
しばらく目を閉じて、自分の気持ちを整理した。
仕事なのだから書くのだ。
今はそれしかない。
でも、その後は……わたしの選択。
ふと気配を感じて、光恵は振り返った。
「ミツ、今いい?」
孝志が立っていた。