豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
過去を懐かしむように。
若い日々の思い出を噛み締めるように。
孝志は微笑んだ。
顔つきや体つきだけではない。
髪を耳にかけ、袖をまくり上げ、
過去の自分に照れて、
それでも今の自分のあり方に自信がある、
大人の男の、ふとした仕草。
「佐田さん、ゆうみさんが探してましたよ」
稽古場の角から、輝がひょこっと顔を出して、孝志に声をかけた。
「ああ、わかった」
孝志は穏やかに頷くと、光恵に背を向け、歩いて行く。
「あの頃、好きだった」
これはおそらく「本当のさよなら」だ。
彼は変わった。
前に進んだ。
とどまったのはわたし……。