豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ミツはなんで?」
「家じゃ集中できなくて。なかなか書けないの」
「そうか……」
孝志はそういうと、再びごろんと転がった。
「今日は大変だったね」
「う……ん。まあ、野島の言うことは、俺も気づいてたから」
「そうなの?」
「昔みたいにはいかないんだ。俺がいない間に、場所がなくなった」
「……」
「劇団のみんなと、どうやって接していいか分からなくなってきてる。難しいな」
「うん」
光恵も孝志の隣に転がった。
「わあ、天井高いんだね」
「ああ、立って見上げるのとはまた違う。自分が小さいって感じるだろ」
「そうだね」
光恵はそう言いながら、塾講師からの、誘いの電話を思い出した。
「確かに……孝志は変わった。もう気軽に話かけたりできなくなった気がする」
「今、こうやって話してるのに?」
「今は顔が見えないから」
光恵がそういうと「なんだよ」と孝志が笑う。
「この作品、小デブの孝志を思い出して書いたんだ」
「そうじゃないかと思った」
「あ、わかる?」
「うん。俺が舞台に戻る時、俺のために書いてって、言っただろ。だから……」
「わたしとの約束を果たすために、一度だけ帰って来てくれたんだって、そう思って書いた」