豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
光恵の心臓が飛び跳ねる。
顔面が紅潮するのが、自分でもわかった。
「だいたい、置いて行く、連れて行くっていう、そういう関係でもなかったんだ。一緒に暮らしたけど、寝なかったし」
孝志が冗談のようにそう言うと、周りが驚いて騒ぎだした。
「ミツに手出さなかったの? お前、随分紳士だなー」
「まあ、キスはしましたけどね」
「おお」
周りがどよめく。
光恵は徐々に腹が立って来た。
さっきの発言は、そういう関係じゃないからっていう。
そりゃそうだ、当たり前。
で、今は、キスしたことを、話のネタにしてるって訳ね……。
「帰る」
光恵は席を立った。
「ミツさん、俺、送ります」
輝が一緒に立ち上がり、光恵の後ろに従った。
本当は一人にしてほしかったし、輝にも最高に腹が立っていたが、ここでごちゃごちゃするのも鬱陶しかったので、何も言わなかった。
帰り際、三池に「悪かったな」と声をかけられた。光恵は無言で会釈をする。とにかく、孝志だけじゃなく、自分の周り全員に、どうしようもなく腹が立っていた。