豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ミツさん」
「……」
「ミツさん、ごめん」
「……」
「ほんと、ごめんなさい」
光恵は立ち止まった。
夜の駅前はざわついて埃っぽい。
電車が発車する音楽が流れる。
「人のことを酒のつまみかなんかだと思ってる?」
「思ってません。でも俺腹が立って、つい……」
「明日からわたし、どうやってみんなの顔を見れば言い訳? 勢いづいてあんなこと言って。どうやって訂正するの?」
「訂正なんかしませんよ」
輝が言った。
「俺、本気です。ミツさんと付き合いたい」
「は?」
「ミツさんが好きです」
輝が光恵の手を引き寄せ、抱きしめた。
「ミツさんが佐田さんを忘れていないのは知っています。でもあの人はもう、ミツさんを見ていない。だからあんな風に、昔の話をできるんです」
「……」
「ミツさん、あの人を忘れてください。俺が忘れさせます、絶対」
光恵の耳元で、輝はそう言った。