豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
夜、塾の授業が終わった。
ここは中学受験専門の予備校。小学生達が夜九時ぐらいまで勉強している。最近の小学生は、本当に大変だ。
光恵は肉体的にも精神的にもへとへとになって、職員室の自分の席へと戻ると机につっぷした。
「ふう」
思わず大きく息をつく。
とにかく明日から、しばらく稽古場にいかなくていい。それが光恵には救いだ。
思わず、うとうとしそうになると、「皆川先生!!!」と声をかけられた。
「はい?」
びっくりして勢い良く顔をあげると、同僚の白鳥先生が立っていた。彼女は四十近くのベテラン講師だ。その彼女が顔を紅潮させて、光恵を見下ろしている。
「皆川先生、きてる!」
「は? 誰が?」
「だから、受付に、佐田孝志が。あれ、佐田孝志でしょ?」
光恵はあわてて受付を見ると、帽子とだて眼鏡をかけた孝志が立って、こちらを見ていた。
あの馬鹿、なんできた!?
光恵は慌てて受付に駆け寄った。孝志の周りには、小学生を迎えに来た母親が気づき始めていて、ざわざわと落ち着かない様子になっている。