豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


「何してんの?!」
「ミツに会いに」
「くるなっ」
「なんで? 明日から稽古場こないんだろう? 会えないじゃないか」


孝志はにやりと笑って眼鏡を取る。職員室にいた女性講師がざわついた。


「ねえ、皆川先生って、佐田さんとお友達なの?」
白鳥先生がよってきた。心なしか声が高い。


「今、一緒に仕事してるんで」
光恵がしぶしぶ答えると、白鳥先生の顔がぱあっと輝いた。


「あの、握手していただけますか? できればサインも」


孝志が「いいですよ」と答えると、他の女性講師達もつぎつぎと側に寄って来た。光恵は「なにごと?」と興奮する小学生達に「気をつけてかえってね」と声をかけて、慌てて孝志を職員室に入れる。


そこから、大サイン会が始まってしまった。


光恵は呆然とその光景を見つめた。孝志はパイプ椅子に座って、誰にも完璧な笑顔で対応している。握手をして、サインをして、にこやかに写真に映る。


ほんと、あいつ、何しにきたの???


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