豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「悪魔ーーーーーーーー!」
早朝の冷たい空気の中、孝志ははあはあと息をしながら、叫び声をあげた。
「何いってんの? まだ家を出てから十五分しかたってないよ!」
「もう一時間ぐらい走ったよぉ」
「そんな訳ないじゃん。ほら、立ち止まると疲れるんだよ! 走って!」
自転車に乗りながら、光恵は声をあげた。
最初はウォーキングからスタートした。
「ミツ。膝がいたい。コンドロイチン飲まなくちゃ」
「どこのお年寄り?」
「だって、ほんと、痛いよ」
体重の増えた孝志は、最初身体が重くて走れなかったのだ。
体重を少し減らし、筋力を付け、徐々に走れるようにした。それでも孝志はランニングが不得意らしい。走り出してから何日か経ったが、すぐに休憩したがる。
体力がない訳じゃないと思う。舞台の上では走り回るし、ダンスもうまい。体型に似合わないキレのある動きをするのに。
光恵はへろへろと走る孝志を後ろから眺めながら、解せないという顔をした。
孝志の背中が、ぴたっと止まった。
自動販売機を食い入るように見つめている。
あ、始まった。
光恵は自転車を孝志の横につけた。