豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ミツ、ご飯食べにいかないか?」
「……ご飯?」
「そう、イタリアンでいい? 予約してあるんだ」
孝志はそういって、大通りでタクシーを止めるために手を上げた。
まるで映画を見てるみたいだ。光恵はごしごしと目をこすった。
連れて行かれたのは、広尾にあるイタリアンレストラン。女性好みの店内。一番奥の個室に通された。
広尾から帰るの、遠いなあ。
光恵はぼんやりとそんなことを考えていた。極力、目の前の孝志を見ないように、意識を遠くに飛ばす。
人間、注目されて、磨かれると、こうも違うんだなあ。
「ミツ、ワイン飲む? それともソフトドリンクにする?」
「……」
「ミツ」
「……」
「光恵!」
突然名前を呼ばれて、光恵ははっと我に返った。
「な、何?」
「飲み物、何にするって聞いてるんだけど」
「あ、ああ……なんでも……」
光恵は突然にばくばくし始めた心臓をなだめるために、グラスの水を一杯飲んだ。孝志はそんな光恵を見て、不思議そうな顔をしている。