豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
孝志がまじめに頭を下げたのを見て、光恵は少し驚く。それから自然と笑みがこぼれた。
「今度、訳のわかんないことしゃべったら、孝志の秘密も全部しゃべるから」
「え!」孝志が顔を上げた「そりゃ、まずいって」
光恵はにやにやしはじめた。
「セクシー俳優みたいな顔してるけど、つい昨年まで……」
「ちょちょちょ、やめてって。ミツしか知らない秘密だよ。表沙汰になったらリーク元はミツだって、すぐにばれるからな」
「あはは、しゃべりたい。キスだって、ひどいもんだったって言うからね」
「誰も信じないよ。俺、今、すごくうまいから」
光恵の胸がドキっとしたが、ばれないようにワインを一口飲む。それから「どーだか」と笑い飛ばした。
二人の間の空気が一気に和らいで、光恵に少し余裕が出て来た。孝志も楽しそうにグラスを傾ける。
「なあミツ」
「ん?」
「昔みたいになれないかな」
孝志は微笑みながら、そう言った。
「昔みたいに、普通に、しゃべったり、笑ったり。ミツも、それから俺も、なんだか妙に構えてる」
光恵はグラスを置いた。グラスを持ったままじゃ、手が震えているのがばれてしまう。
「野島も、みんなも、それからミツも、俺が変わったって言うけど、俺は変わってないよ」
孝志が光恵の目をみつめながら言った。