豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「バイバイ、また明日」
玄関先でゆうみが手を振る。
「気をつけて」
孝志はそういって、扉を開けてゆうみを送り出した。
彼女の背中が廊下を歩いて行く。孝志は彼女がエレベーターに乗るまで見送った。
この仕事をしていると、ストーカーのような危険がつきまとう。いつでもどこでも、誰かに見られている気がするし、実際に見られている。気を抜けるのは、自分の部屋のみ。
「ふう」
孝志は溜息をついた。
本当は光恵と、いろんなところに行きたかった。遊園地とか水族館に誘いたかったが、騒ぎになるのは困る。彼女の顔が世間にばれたら困るし、彼女はいわれのない非難を受ける。それはどうしても避けたかった。
「考えなしにこの仕事を選んじゃったけど、失うものも多かったなあ」
孝志はそうつぶやいてから、光恵の涙を思い出す。
もしかしたら、友人としての光恵も失うかも……。
孝志はあわてて頭を振って、そんなネガティブな思考を追い払おうとした。冷蔵庫に直行して、キットカットの香りをかぐ。
俺の精神安定剤。
でも、ミツがいてくれれば、このチョコもいらない。
ミツ、大好き。