豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
光恵のアパートが見えて来た。
木造二階建て。比較的新しいが駅からかなり遠い。そのせいか家賃は安めだ。
光恵は自転車を飛ばして、先に駐輪場に入れる。振り返ると孝志がよたよたと追いついてきた。
「お水と朝ご飯持ってくるから、身体をのばして待ってて!」
光恵はそう声をかけると、駐輪場脇のポストから自分宛の郵便物を取り出した。
『寿』の印のある、はがき。
光恵は無意識に「あ」と声を漏らした。はがきを手に立ち尽くす。
「はあ、はあ、はあ……ミツ……どうしたの?」
後ろからヒョイ、と孝志が顔をのぞかせた。
「結婚式? あ、二次会か」
荒い息をしながら、能天気に孝志が言う。
光恵は、はがきをジャージのポケットにぐいと押し込むと、熱気むんむんの孝志を押しのけて、部屋へと向かった。
涼しく暗い部屋の中。整頓された1DK。
そうか。
結婚……するんだ。
光恵は大きく深呼吸をすると、用意してある冷やしたミネラルウォーターのボトルと、朝作ったおにぎりと野菜のセットを手に部屋を出た。