豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「俺も、佐田さんには負けませんから」
輝はそういうと、くるりと背中を向けて、早足で立ち去った。
残された孝志は、あまりにもショックで動けない。ポケットの中に入っていた手は、輝がしゃべっている間中ずっと、キットカットを握りしめていた。
キットカットを取り出して、思わず封を切る。
手の温かさで、溶けたチョコレート。
無意識に、孝志はチョコレートを口に入れていた。
俺……あいつにミツを取られるかも。
俺は、どうしたら……。
先ほどキスをした感触は、あっという間に闇に飲み込まれ、むなしさだけが唇に残る。
孝志はとぼとぼと、歩き出した。
夜風が冷たかった。