豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
孝志はうなだれて、稽古場の壁によりかかった。
俺はプロで、こんなことで駄目になったりしない。
大丈夫だ。きっと大丈夫。
目を閉じて、自分に暗示をかけた。
「孝志」
ゆうみが隣にいた。
「大丈夫?」
「ああ」
「練習、今夜付き合おうか」
「悪いよ」
孝志は首を振る。
「いいの。時間あるし。それにわたしのときも、孝志に助けてもらったから」
ゆうみはにこりと笑いかける。
「悪いな」
「いいんだって」
ゆうみは安心させるように、孝志の腕を軽く叩いた。
目を上げると、輝が孝志を見ている。
あいつ笑ってる。
「俺も佐田さんに負けませんから」
輝の声が、頭の中にこだました。