豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


ゆうみのマンションにくるのは初めてだ。廊下にも厚手の絨毯が敷かれ、各部屋の独立性が重視される創りとなっている。


ゆうみは暗証番号を押し、持っていたカードキーで扉を開いた。


「部屋はいってもいい? 俺、誰もいないか、とにかく見てみるよ」
「うん、ありがとう」


ゆうみは玄関で、心細そうに自分の身体を抱きしめている。孝志は緊張しながら、すべての部屋をチェックした。部屋の間取りは、孝志のマンションと似ている。広い1LDKだ。シンプルな孝志の部屋と違って、置いてある小物や、ファブリックは、とても女性らしい。シャンデリア風のランプに、花をモチーフにした食器の数々。家の中に、かすかにアロマの香りが漂っていた。


「ゆうみ、大丈夫だよ」
誰もいないことを確認してから、孝志は玄関のゆうみに声をかけた。


ゆうみは恐る恐る部屋の中に入ってくる。眉間に皺をよせ、ぐったりとした様子だ。ソファに座ると溜息をつき、顔を覆った。


「今日どうする? ホテルとろうか?」
ゆうみが首を振る。


「いい、大丈夫。暗証番号かえるし、疲れてるから今から移動とかしたくない」
「でも怖いだろ?」
「まあね……明日、志賀さんに相談してみる。引っ越ししなくちゃならないかも」
「そうだね」


孝志は、おびえるゆうみをそのままに帰ることができない。ゆうみの隣に座って「しばらくいるよ」と声をかけた。


「ありがとう」
ゆうみが笑顔を見せた。


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