豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「じゃあ、行くかどうか、考えとくから」
「え? また保留?」
輝が頬を膨らます。
「俺のことも『考えさせて』って保留にしてるくせに」
光恵はいたたまれなくて「あはは」と笑ってごまかす。
そうだった、返事を保留してるんだ。
「わかった、じゃあ、明日稽古場行くから」
「やった。朝迎えに来ます」
輝はガッツポーズを作った。
「じゃあ、俺、帰りますね。もう遅いし、ミツさんの顔を一日一回見られれば、満足。コーヒーごちそうさまでした」
輝は満面の笑みで、光恵のアパートを立ち去った。
扉が閉まると、光恵はほっと息をつく。
確かに輝と話をすると、正直、楽しい。気が楽で、変な緊張もしない。素直に好意を口に出されるのは、照れるけど悪い気はしない。
ただやっぱり、輝に甘えてるだけなんだろうな。
光恵はカップを片付けながら、ぼんやりとそんなことを思った。
ふと壁を見る。
ここで、孝志に唇を奪われた。