豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
前の孝志では考えられない、強引で、それでいて甘い、唇。
「すごく、うまくなってた」
光恵は顔から火が出そうになる。思わず孝志を受け入れてしまったことも、本当に恥ずかしい。
『ミツが大切だから来た。キスしたいからする。それじゃ駄目な訳?』
それって、どういう意味なんだろう。
大切って、友人として?
ちょっと欲情したから、キスしてみたってこと?
「だめっしょ」
光恵は口に出した。
「まったく、なんの反省もない。謝ればすむと思って、本当にどうしようもない男だ」
カップを洗いながら、独り言を続けた。
『今、佐田さんが、スランプなんだ』
スランプ?
信じられない。
あの孝志が。
大丈夫かな……。
いやいや、気にしない、あんな男。
わたしが心配なのは、舞台の出来上がりだけ。
あと、輝くんも見てあげよう。
頑張ってるらしいから。
光恵はうんうんと一人で頷きながら、水をきったカップを籠に伏せた。