豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
孝志……。
光恵は席を立った。
「ミツさんどこいくの?」
「もう帰るわ、おつかれさまでした」
「ええー、一回見ただけ?」
輝がぶーっとふくれたが、それを無視をして、稽古場を後にした。
孝志が心配だった。光恵が励ましても、何にもならないかもしれないけれど、一言なんか言いたかった。
孝志を探して、稽古場の敷地の中を歩くと、脇の壁にもたれかかる孝志が見えた。
「孝志」
光恵は背中から声をかけた。
孝志はポケットに慌てて何かをつっこむと、くるりと振り向く。
「ミツ」
「……大丈夫?」
「大丈夫だよ。こんなスランプ、何回も経験してきた」
「そうなの?」
「そうだよ、必ず大丈夫になる」
孝志はそういって笑った。