豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「孝志のこと……」
光恵の胸がちくちくと痛む。
「そのときには気づいてなかったけど、すごく好きだった気がする」
光恵は言った。
言葉にすると、それは現実になる。
ああ、好きだった。
本当に孝志のことが好きだった。
「俺も今になって、あれが好きっていう気持ちなんだって、分かるようになった」
孝志が顔をゆがめるように笑った。
「ミツが大好きで、仕方がなかったんだ。あのとき『好き』って言えればよかった」
孝志が言う。
「そうだね、わたしも」
光恵は頷いた。
孝志は昔の感情に、かたをつけようとしているように見えた。
もう今は、二人とも、住む世界が違いすぎる。
孝志が光恵の顔を見て、それから光恵の身体を抱き寄せた。
ほのかに、甘い、チョコレートの香り。
「ミツの側にいるの、今は、俺じゃないんだな」
光恵も孝志の身体に手を回した。
「孝志はあまりにも遠い人になってしまった。大好きな孝志は、いなくなっちゃった」
光恵は言った。
目に涙が溢れてくる。
終わりだ、これで。
本当に終わりなんだ。