豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「じゃあ、なんで出てったの?」
すると孝志が光恵の顔を見つめ微笑んだ。
「前に、元彼から結婚式のはがきが来てただろう? それを見て、ミツがいったんだ。
『将来好きな人ができて、結婚したいと思っても、この仕事で食べて行けてなかったら、どうするの? 不安にならない?』って」
孝志はもうひとつキットカットを口にいれる。
「そのとき思ったんだ。そうか、いつかミツと結婚したいと思っても、今の俺じゃ駄目なんだって。俺は学歴もないし、できることは役者ぐらい。だから外で頑張ってみようって、そう思った」
光恵は思い出した。
あのときの孝志の顔を。
まだまんまるで、光恵の言うことを、不思議そうに聞いていた。
「でもいざ役者として独り立ちして、自信満々で帰って来たら、ミツはもう野島と一緒にいた。野島のポジションは、俺の場所だったのに。
だからっ。
ミツを手に入れられないなら、
我慢して痩せてなくても、
別にいいんだっ」
孝志は再びキットカットの封を切る。
「ちょ、食べ過ぎ!」
光恵はあわてて、その手を止めた。