豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「職員室で待とうかな」
「え!? それはまずいんじゃない? みんなそわそわしちゃうし」
「そっかー、じゃあ、出直す」
孝志はくるりと背を向けると、あっさりと離れて行く。
光恵はほっとして、エレベーターのボタンを押した。
事前にメールとか、くれればいいのに。
突然だと心臓に悪いんだから。
エレベーターの扉が開き、乗り込む。ボタンを押して、エレベーターの角っこに、背中をつけた。
ご飯でも食べにいくのかな。
でもこの間みたいに、しゃれた店は……。
閉まりかけた扉の間に、すっと手が入る。
その手がぐいっと扉を開けて、孝志が入って来た。
「!?」
光恵は驚いて目を開く。
孝志はそのまま光恵を壁に押し付ける。
「え? なにして……?」
眼鏡をかけた孝志が、光恵の顔を覗き込む。光恵の顔に血が上った。
孝志はそのまま光恵にキスをする。
濃厚で、とろけるような、口づけ。
軽く唇を噛まれて、光恵から思わず吐息がもれた。
孝志は唇を離し、にやっと笑う。
それから自分の唇に指をあてて「しずかに」とつぶやいた。
「ちょっと……」
光恵が動揺すると、孝志はさっとエレベーターを下りた。
舌をちょっと出して「また後でね」と言う。
それから笑顔で去って行った。