豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「何?」
光恵は素直に孝志の側に寄った。
「じゃああーーーん、腹筋!!!!!」
孝志がシャツを勢いよくまくると、細くしまった腹部が、はっきりと六つに分かれている。
「お!……お?」
光恵は目を凝らした。なんか、違和感がある。
「これって……」
光恵は眉を寄せて、孝志を見る。
「描いた!!!」
孝志が偉そうに胸を反らした。
「俺、頭いいと思わない? このメイクすればいいじゃん」
そう言う孝志のお腹は、既に溶け出している。汗でメイクが流れ始めているのだ。
「消えかかってるけど……」
「マジ? さっき、三十分かけて描いたのに!」
孝志は慌てて、自分のお腹を見ている。
「わかった! 油性ペンで描けばいい」
孝志がこれまた得意げに言うので、光恵は深く溜息をついた。
「そんな馬鹿なことしてないで、筋トレしなさいよ」
「ええ!!? あと一週間しかないんだよ?」
「ぎりぎりまであきらめないの!」
「ちぇ……」
本気でほめられると思ったのか、明らかにがっかりした様子で光恵に背を向ける。
それから無言で腹筋を始めた。