豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
孝志が光恵を見つけて寄ってきた。
「きたんだ」
「うん」
「来なくてもいいって言ったのに」
「ちょっと気になって」
「ふうん」
孝志がネクタイを緩める。それから差し入れのキットカットを見つけた。
「あー、俺のチョコ」
「差し入れに持って来たの」
「ずるぅ。俺の金で買ったのに。感謝されるのはミツなんだ」
「ケチくさいこと言うわね、あんなところに住んでるのに」
孝志が笑う。それから着替えにロッカーへと向かった。
いつもと変わりない。
わたしがここにいても、嫌な顔しなかった。
『こなくていい』って言ったのは、演技を見られたくないからかも、と思ったけど、勘ぐりすぎだったか。
視線に気づいて、光恵は振り返った。
「おや」
三池がにやにやしながら、光恵を見ている。
「……なんですか?」
「野島、大失恋じゃないか」
「……そういうんじゃないですよ」
「またまた」
三池はそこで少し考えるような顔をする。
それから「孝志がおかしいのは、ミツとそうなったからなんだな」とつぶやいた。