豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「どこに行きたい?」
「そうね……ディズニーランド」
光恵はなるべく明るい声を出し、そう答えた。
「楽しそうだな……カリフォルニアに行く?」
光恵は目を丸くして「舞浜でいいよ」と言った。
「東京じゃあ、楽しく遊べない。誰かに見られるし」
「……そっか、じゃあ、別のところでも」
「いいじゃないか、アメリカ行こうよ。香港でもいい」
「だって、わたしそんなお金ないもん」
「何言ってんだよ。俺が連れてくに決まってるだろ」
孝志はにこりと笑顔を見せる。
「ミツは、そんな心配しなくていいんだ。俺はそのために頑張ってきた。仕事だって、好きなことをやればいい。俺がいる限り、ミツは自由だ」
おそらく、どの女性にとっても、幸せな言葉だろう。
でもなんだろう、胸がもやもやする。
この小さな部屋で、バイトと掛け持ちで、必死に文章を書いて来た。
「それはわたしの問題だから」
光恵は思わずそう言ってしまった。
孝志の言葉に悪気がないことは分かっているし、彼の誠意は伝わっているのに。
孝志は少し不思議そうな顔をして光恵を見る。それから「もちろんそうだよ」と言った。