豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
しっくりこない。
孝志の言葉、仕草に、違和感がある。
なんでだろう。
キットカットを立て続けに食べていた孝志なら、今頃「どうしよう」と騒いでいてもいいはずだ。わたしに会いに来てなんかいない。稽古場で、それこそ朝まで舞台のために練習しているはずだ。こんな余裕を見せている訳がない。
ゆうみの口紅が思い出される。
「ミツのために頑張った」
でもその間、誰かとキスをして、誰かを抱いて来たのだ。
「映画に濡れ場があることを知ってから、長期の休みを訴えた」
じゃあ、あの時、この部屋でみせた動揺は、すべて芝居っていうこと?
孝志が光恵の髪をそっとなで、愛しそうに瞳を見つめる。
この人、役者だった。
目の前の人物が、今、芝居をしてないって、言えるの?
孝志の本音がわからない。
どれが本当の、佐田孝志なんだろう。
苦しくて仕方がない。