豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


「いい、コンビだな」
三池が笑いながら後ろから声をかけた。


「とんでもありませんよ。同じ歳のはずなんですけど……言動が小学生みたいです」


光恵がそう言うと、三池は声に出して笑い出した。
「ミツがあいつを見てくれて助かったよ」


それから立ち上がり「おい、通しの前にシーン15、もう一度やるぞ!」と声をかけた。孝志を含めた役者達が、簡易の舞台へとあがって行く。




孝志のスイッチが入ったのがわかった。


小デブは、舞台に立つと輝きだす。
たとえ、脂ぎった汗をかいていたとしても、観客を魅了する。彼の背は大きくはないが、彼の声が、表情が、身体が、舞台を小さく見せるのだ。


光恵は、センターで声を張り上げた彼を見て、もう彼が『小デブ』ではないことに気づいた。


最高の役者が、そこにいた。

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