豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「お待たせ」
稽古場の扉を開くと、広い部屋の中の真ん中で、ゆうみはまだ芝居の練習中だった。彼女が立つ、初めての舞台。緊張が伝わってくる。
「あ、ありがとう」
ゆうみは孝志の声に振り向くと、笑顔を見せる。鏡の前に置いてあった鞄を手に持ち、歩いて来た。
ゆうみが助手席に座り、シートベルトを締める。孝志はエンジンをかけて、走り出した。
「ホテルオークラ?」
「うん、ありがとう」
「家には帰ってないの?」
「そう、やっぱり、危ないからって」
ゆうみはそう言うと、ふうっとため息をついた。
「本番直前なのに、仮住まいなんて、落ち着かないな」
「仕方ないよ、身の安全が一番だから」
しばらく無言で高速を飛ばす。流れる景色。きれいな夜景。
「光恵さんと、もしかして、付き合いだした?」
ゆうみがたずねた。
横目でゆうみを見ると、特に怒ったり、悲しんでいる様子はない。
「うん、そう」
孝志は視線を前に戻し、少し緊張しながら言った。