豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
車から降りて、エレベーターを待つ。二人の間に広がる、無言が痛々しい。
俺、どうして、あんなことしちゃったかな……。
すると後ろから足音が聞こえた。
振り向く。
あっという間だった。
孝志の腕がスパッと切れる。小さな血の粒が、空中に浮かび上がるのが見えた。
「たかし!」
ゆうみの悲鳴のような声がする。見ると黒いパーカーを着た男が、ゆうみの肩をエレベーターに押さえつけていた。
「ゆうみっ」
孝志は素早く立ち上がると、男の腕を引っ張った。邪魔をされた男は、ナイフを再び振りかざす。孝志はすかさずその腕を取り、男の腹に膝で蹴りを入れた。「うぅ」とうめく男の手から、ナイフを取り上げる。
「ゆうみ、警察に電話!」
男をうつぶせにし体重を掛け、取り押さえながら怒鳴った。
「ちくしょー、こんな男のどこがいいんだ」
孝志の膝の下で、うめくように男が言った。
孝志が「うるさい」とフードを取ると、ゆうみが「あ」と声をあげる。
「この人、マンションの管理人さん……」