豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
警察が来て、志賀もかけつけた。
孝志は救急隊員に切られた腕を手当てしてもらう。男性救急隊員は、ゆうみがそこにいることが信じられないようで、何度も彼女の姿を確認していた。
「腕の傷はどう?」
志賀が孝志の背中をさすりながら訊ねた。
「大丈夫です。浅いし、初日までには、痛みも和らぎます」
「大事にならなくてよかった」
志賀はほっとした様子で、そう言った。
「本当は休ませてあげたいけど、そうもいかないのよね。明日はリハーサルだし」
「わかってます」
「このニュースで、少し身辺が騒がしくなるかも。二人とも気を引き締めてね」
「はい」
初日前に、こんな話題で、マスコミを騒がせたくなかった。舞台の良さで、人を呼びたい。興味本位で舞台の話を取り上げられるのは、不本意だ。
でも。
ゆうみを見ると、ストーカーから解放されてほっとしているように見える。
とにかく、犯人が捕まってよかった。
孝志は胸を撫で下ろした。
けれど翌日、新聞の芸能欄一面を飾ったのは、ストーカー撃退の話題ではなかった。