豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「光恵さんは受け入れられないんだわ、変わってしまった孝志を」
光恵はゆうみの言った言葉の意味を考えた。
「たとえわたしが今『孝志とは寝ていない』と言っても、光恵さんは否定するでしょうね。
あなたが『寝た』と思うなら、それが真実。
だって第三者に、わたしと孝志があの夜何をしていたのか、知る術はないんですもの」
「わかるのは、自分の心だけ。
孝志が誰を好きで、誰を愛しているかなんて関係ない。
わたしは彼のことが好き」
そこでゆうみはにこっと笑う。
「あなたも、自分の心は、自分でよく分かってるでしょ?」
ゆうみはそう言うと、光恵から離れて行った。ちょうどカーテンから出て来た孝志の腕に手をやり、何かを話している。孝志はちらりと光恵を見ると、気まずそうに目をそらした。
小道具の最終チェックをしていた劇団員二人が話しているのが耳に入った。
「孝志とゆうみ? 確かにすげー仲いいなとは思ってたけど」
「うらやましいな、ほんとに」
「でもきっと疲れるぞ、あんなきれいな女。誰かにとられやしないかって、いっつもびくびくしそうだ」
「まあな。あの二人は、別世界の住人ってことだ」
「ミツさん」
声をかけられ、振り返ると着替え終わった輝が立っていた。