豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
千秋楽。
夏の終わりを感じさせる、穏やかな風がふいている。
始まってからは、あっという間だった。うれしいことに評判もよく、リピーターが当日券を求めて列を作る日々が続いていた。光恵は千秋楽の席を確保していたが、放出する当日券が足りないので、結局楽屋のテレビモニターからの観賞となった。
楽屋には心地よい緊張感が流れる。光恵は手土産をテーブルの真ん中に置き、仕事の邪魔をせぬよう静かに座って始まりを待っていた。
「ミツ」
衣装を着けメイクを終わらせた孝志が、光恵の側によってきた。
「おつかれさま」
「うん」
孝志はこくんと頷く。
「俺、がんばったろ?」
孝志はそう言って、シャツの前をたくし上げる。適度に鍛えられた、美しい腹部が見えた。
「うん、よくやった」
光恵は、まるでテストで百点を取ったかのような、孝志の自慢げな顔を眺めながら、いつもとは違った達成感を感じていた。