豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ちょっと外の空気吸いにでませんか?」
気を使ってくれてるのだろう。輝は、孝志とゆうみの方を見てから、光恵の腕をとった。
春の暖かさ。
土の香りと、心地のよい風。
二人は並んで敷地の中を歩いた。
「舞台が終われば、こんなことから解放されます」
輝が言う。
「佐田さんがミツさんを傷つけることは、もうなくなります」
「かもね……」
輝が立ち止まる。光恵は振り返った。
ウェイター姿の輝は、若々しく、名前通り輝きに満ちていた。
「俺じゃ駄目ですか?」
「輝くん……」
「俺はミツさんを傷つけたりしません。佐田さんよりも、ミツさんのことが好きです」
光恵はその言葉にすがりつきそうになる。
自分の心なんて、わからない。
だって、今にも泣き叫びそうなんだもの。
輝が光恵を優しく抱きしめる。
思わず光恵も輝に腕を回した。
目を閉じる。
このぬくもりに、確かに今癒されてる。
でも、きっと、これじゃいけない。
「輝くん、わたし、あなたに寄りかかれない」
「……わかってます。それでもいいって言ってるんです」
「強いのね……」
「それくらい、あなたのことが、好きなんです」
「野島、離れろ」
低い声が後ろから聞こえた。