豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
輝は光恵の身体を離した。
「光恵と話したいんだ。席を外してくれ」
孝志は静かで、でも有無を言わさぬ声で、言った。
輝は一度光恵の手をぎゅっと握ると、何も言わず稽古場へと帰って行く。
孝志が光恵に歩みよった。
「ミツ、悪かった」
孝志が言った。
光恵の心臓に、とげが無数に刺さる。
ゆうみと一緒にいたことを、認めてるんだ。
「でも俺は、ミツを裏切ってない」
「……嘘」
「本当だよ」
「どうやって信じろと?」
光恵は感情を表に出さない孝志の顔をにらみつけた。心の中に押し込められていたものが、一気に吹き出してくる。
「どれが本当の孝志かわからないの! あまりにも以前の孝志と違う。昔の孝志なら、女の子と一晩共にしといて、何もないよって、そんな冷静な顔で言わなかったでしょ?」
孝志が黙り込む。
「あの映画の脚本だって、うちに来る前にすでに読んでたって聞いた。わたしの前で芝居して、嘘をついて、なんなの? 今だってわたしを好きだっていう芝居をしてるんでしょ?」
「……」
「わたしと再会して、感傷的になった? ちょっと思い出に浸ってみようって、そういうことなの?」
「……」
「わたしと一緒にいて、何かいいことあるわけ? 舞台で演技ができなくなっただけじゃない!!!」
光恵の口から出た言葉は、想像していたよりも痛かった。
孝志の顔が衝撃で歪む。
志賀の言葉が頭をよぎった。