豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
初日、光恵は観客席に座って舞台を見た。自分の世界が目に見える。それは贅沢で、幸せなことだ。隣に座っていた女の子二人組は、どうやら孝志のファンらしかった。スマホの待ち受けが孝志の舞台写真だ。光恵は自分の携帯に保存されている写真を思い出す。
このレア写真いりませんか?
別人じゃあありませんよ。
本人です。
そう、実は小デブなんです。
そんなことを思って、にそにそ笑ってしまった。
舞台上の孝志は、最高にかっこ良かった。
心のどこかで、孝志なら必ず成し遂げるだろうと、信じていた。
疑っていたら、孝志をメインにこんな台本書かなかっただろう。
孝志は必ず、舞台で観客を魅了する。
一ヶ月間の舞台をやり遂げようとしている今、目の前の孝志はまぶしいぐらいだ。日を追うごとに、孝志はどんどん輝きを増す。大きな拍手、歓声が、彼に自信をつけ、それが外見にもあらわれるのだ。
光恵は拳でポンと孝志のお腹を叩いた。
「キープしろよ」
「えへへ」
孝志は照れるように笑うと、光恵の側を離れた。