豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
これからどうしよう。
志賀の申し出を受ける気はない。脚本家として魅力的な仕事だが、佐田孝志の存在を感じる場所にはいられない。彼とは一切縁を切って、できれば世捨て人のように山奥にでもこもりたかった。
自給自足で、トマトとかきゅうりとか育てて。
テレビもラジオもネットもない、彼の顔を見なくてすむ、そんな場所にいってしまいたい。
だいたい、なんでそこかしこに顔の出る職業なんだろう。
普通ならば、連絡を断てばそれで終わりなのに。
つくづくやっかいな男。
もう潮時なんだ。
文筆業で食べて行くのは難しい。
加えて、孝志と縁を切りたかったら、この業界から出て行かなくては行けない。
このタイミングで塾講師の誘いがあるってことが、潮時だっていうサインなんだ。
選ばざるを得ない。
これがわたしの選択。
ぼんやりとそんなことを考えながら座っていると、隣から女性達の話が耳に入って来た。