豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
舞台袖で、周りの冷やかしを受けながら、キスをする。
「ねえ、孝志」
「何?」
「やっぱり、すっごくキスがうまくなったよ」
「そう?」
「怒らないからさあ、誰と練習したか教えて」
孝志は唇を離し、光恵の顔をまじまじと見る。
「引くよ」
「いいから、言ってよ」
「怒らない?」
「怒らないってば」
「まくら」
「枕?」
「そう、家の、まくら」
「……それ、本当に?」
「嘘ついてどうすんの?」
「うわあ……」
「あっ、ミツ今、すごいどん引きしたでしょ」
孝志がふくれる。
「だって、想像したら、キモ……」
「きもいって、いうなっ。ミツに拒否られて、こっちは必死だったんだ」
「ふふふ」
「笑ってろよ」
「志賀さんとって方が、よっぽど現実感が……」
孝志は少し考えて「想像させるなよ!」と光恵の頬をつねる。
「ごめんごめん」
光恵は孝志の首に手をかけ、それから引き寄せる。
「キモいけど、まあ、いっか。好きだから、許してあげる」
そしてまた、長いキスをした。
【完】