豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
川平湾は最高にきれいだった。船の底に張られたガラスから、珊瑚の間を泳ぐたくさんの魚が見える。
波に揺られると、孝志が光恵を庇うように、肩に手を回した。
その何気ない仕草に、きゅんとくる。
やばい、完全に恋人モードになってない?
顔を赤らめながらふと前を見ると、乗り合わせた観光客の一人がちらちらとこちらを見ている。
孝志が「日本じゃ楽しめないかも」と言っていた意味を、徐々に理解しはじめる。こんなにしょっちゅう、人の視線を気にしなくちゃいけないなんて、なんてしんどいんだろう。
無意識に小さく溜息をつくと、孝志が耳元で「気にしない」とささやく。
「だよね」
光恵は頷いた。
グラスボートが無事に浜に到着した。孝志に支えられて、真っ白な砂の上に降りる。
「お腹へったよー。おそば食べよー」
孝志が甘えた声で言うので、じゃあ「行こうか」と光恵は頷く。
そこで「すみません」と声をかけられた。
振り向くと、先ほど一緒のボートに乗っていたカップルだった。
「すみません、もしかして、佐田さんじゃありませんか?」
ロングヘアをアップにして、サマードレスを着ている。